異世界転生・転移と呼ばれる小説群が流行っている。特に小説家になろうというwebサイトを中心に、いわゆるアマチュアな物書き(一般ユーザー)たちが、異世界を舞台に物語を描いているのだ。こうした異世界転生ものの流行に対して「なぜ流行っているのか?」といった議論は複数あるが、筆者が200作品ほど小説家になろうで作品を読んでみた結果の疑問は、「なぜ異世界に行きたいのか?」である。この「異世界」に非常に魅力を感じる何かがあるに違いない、そう考えた筆者は現代日本社会の状況と照らし合わせながら、異世界でないといけない理由を考察したいと思う。 異世界転生・転移とは何か異世界転生・転移というのは何かということについて、既に多くの論調がみられるが、いわゆる仏教的価値観における輪廻転生の概念を、現世と地獄の往復ではなく、別世界(異世界)に転生(生まれなおし)をするという、魂の存在を前提とした世界観ということだろう