『公研』2020年2月「めいん・すとりいと」 呉座 勇一 今年のNHK大河ドラマは『麒麟がくる』。主人公は明智光秀である。昨年から今年にかけて、例によって大河ドラマ関連本が多数刊行された。 明智光秀は謎の多い人物である。その前半生も本能寺の変の動機も、いまだ定説を見ない。光秀に関する史料が乏しく、歴史学界でも結論が出せないため、作家や自称歴史研究家が「謎解き」に多数参入している。ゆえに、今回の大河ドラマ関連本は、例年以上に玉石混淆である。 特に私が懸念しているのは、明智光秀の末裔を称する明智憲三郎氏の活動である。明智説の問題点については、拙著『陰謀の日本中世史』(KADOKAWA)や現代ビジネスのインタビュー「この国に陰謀論が蔓延する理由」、日経BizGateのインタビュー「『本能寺の変』のフェイクニュースに惑わされる人々」などで論じたので、ここでは再説しない。 明智憲三郎氏の問題は、明智