◆『「第二の不可能」を追え! 理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャツカへ』 (みすず書房・3740円) 不可能を可能にした30年 三五〇ページほどの本を読み終えパタンととじた時の爽快感は格別だった。研究はこうでなくっちゃ。どうしても知りたいことを三〇年以上かけて、しかも補助金なしでやり遂げたのだ。宇宙論が専門の著者は、確立した科学原理の一つに抜け道を見つけ新しいタイプの物質(準結晶)を作り出せるという画期的概念を生み、発表した。「ありえない!」。会場にR・ファインマンの声が響いた。彼は時に、「おお! ふつうは正しいとは思えない意外なことだ。よく知る価値があるぞ!」という意味でこの言葉を発する。不可能には「1+1イコール3」のように決してありえないことの他に、前提が必ずしも正しくないために不可能とされているものがある。事と次第によっては可能となる不可能だ。 著者らが挑んだ結晶学の原理