若島正がSFについて書いた文章をまとめた本。 タイトル通りにSFの短篇を1篇ずつ取りあげた12回の講義が前半に収められ、後半には、より広くSFを扱ったさまざまな文章と、特別にジーン・ウルフを論じたり語ったりしたものが集められている(ウルフの超短篇も訳載+読解されている――「ガブリエル卿」)。 といっても、SFに詳しくない私のような人間にもたいへん面白く読めた。それは乱視読者・若島正の姿勢が一貫してこのようなものであるからだろう。 《わたしがよりどころとする立場は、単なる小説読者として小説を丁寧に読むことであり、SFというジャンルの中だけにしか通用しない議論にはさほど興味はない。》p15 そういえば『乱視読者の帰還』(2001)にも、忘れがたい一節があった。 《作品を論じるにあたって、わたしは難解な批評用語を弄ぶつもりはない。丸い卵も切りようで四角というのは、わたしの趣味ではない。むしろ、丸