疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのために僕の勤務先でもリモートワークが導入され、この一年半のあいだは週三回程度出社し、二回程度在宅勤務をしていた。 僕は食生活に重きを置く人間である。当然のように料理ができる。何はなくともメシがまずいと人生の意味がわからなくなるからだ。ふだんは「人生に意味などない」と威張っているので、「人生の意味とは」などと考えはじめる段階でよほどの重症である。 とはいえ僕もまた長時間労働が常態化した現代日本の会社員であり、休日はともかく平日の晩飯作りにかけられる時間は一日平均三十分程度である。スーパーマーケットへの買い出しの時間を入れるともっと必要だ。リモートワークが導入される前は休日や夜中におかずを作り置きしていた。「召し上がれ今日の俺」と感謝の意を述べて食い、「ごちそうさま一昨日の俺」と言って食事を終えるのである。 その生活には