──文化庁の芸術選奨を受賞されました。 「今年の春にいただいたんです。3月10日の授賞式は、コロナ騒ぎの影響でできなかったんですがね。普段、僕が寄席の高座でやっている紙切りが、大衆芸能部門の芸術選奨をもらえた、それが嬉しくて。だって、落語家で一番最初に芸術選奨をもらったのは、六代目三遊亭圓生です。そういう名人がもらう賞を、僕がもらえたんですから。もう3月以降ずっと嬉しくて、今もまだ嬉しい」(笑) ──紙切りの芸一筋に50年です。 「林家一楽の名で、初めてお客さんの前で芸を見せたのは昭和45年、22 歳のときです。落語家は、寄席のお客さんを見て“この噺にしよう”と決めますが、紙切りは注文を受けて切る。どんなお題が出るかわからないから怖い。僕の寄席の初高座は、昭和50年の新宿末廣亭ですが、出番になると、緊張して胸がドキドキ、う~ッと苦しくなるほどでした。それが和らいだのは、デビューして30年後