作家・大沢在昌さんの『絆回廊 新宿鮫Ⅹ』(光文社)が人気を集めている。外国人犯罪や海外の害虫など新たな犯罪や事件のかたちに迫り、未来を予見するとも言われた「新宿鮫」シリーズの最新刊で、警察や暴力団を組織として描いた前作から一転、人間を描くハードボイルドの原点に戻った作品だ。 大沢さん自ら「今回は直球ど真ん中」という作品は、主人公の新宿署の刑事・鮫島を中心に、困難な状況を突破しようとする人間たちの絆を見つめている。一人ひとりが自分の責任で生き抜かなければならない震災後の状況のなかで「鮫」は新たな光を帯びる。 「オレの小説の書き方は震災の前後で変わってはいない。ただ、前作の『狼花』で組織としての警察や暴力団を書ききったと思ったので、今回はもう一度原点復帰で人を描きたくなった。連載は震災前からだったけれど、単行本を出すときに『絆』がこんなに注目されることばになっているとは思わなかった」 大沢さん