前回紹介した話は、「ちょっと良い話」ではあるが、朝鮮人戦時動員にまつわる話では、やはり悲惨な話、いたましい話が圧倒的に多い。 朝鮮人戦時動員について少しでも調べれば、当時朝鮮人に対する苛烈なリンチの例は、それこそ掃いて捨てるほど出てくる。以下は「消された朝鮮人強制連行の記録」に登場する古河鉱業所の大峰炭鉱の日本人労務係の証言。彼は昭和十九年三月十九日の朝、李山という労働者が仲間の金を盗んで逃亡しようとしたのに気付き、「叩かないことにはしめしがつかん」ため、三十分ほど李山を叩く。以下はその後の記述(太字による強調は引用者。また本文では労務係の実名が書かれているが、ここでは伏せ字にした)。 「○○さん、死んだぞ!」 その声を聞いても李山とは考えないで、寮生の誰かが事故死したと思った。 「おい、誰が死んだとか?」 「決まっとろうが、お前から叩かれた半島たい」 「馬鹿いうな、李山が死ぬわけがなか」