「輸血」は若返りに効果的か 1920年代初頭の旧ソ連、ひとりの科学者が人類の未来に関わる大望を胸にモスクワの街路を歩いていた。 この科学者、アレクサンドル・ボグダーノフは作家で哲学者で内科医でもあり、熱心な共産主義者だった。もっとも、シベリア送りを恐れて共産主義になったのではなく、他の共産主義者が恥じ入るほど共産主義を心の底から信奉していた。彼は自らの政治理念やSF小説、さらには単細胞生物の研究に触発され、人類は互いに血液を共有すべきだと確信するに到った。理想的な共産主義社会を実現するにはどうしてもそうしなければならない、と考えたのだ。 実を言えば、輸血による若返りも期待していたようだ。行動派のボグダーノフは早々と政府の支援をとりつけ、モスクワに輸血のための研究所を設立すると早速、輸血に取りかかった。もちろん、自分も実験台になった。 当初はすべてが計画どおりに運んだ。彼自身は2年間で10回