一八世紀に姿を現してから、現代社会の規範として内面化されていく勤勉な労働倫理と、その裏表として登場してくる怠惰なスラッカー(怠け者)主義の歴史を、各時代を代表するスラッカーたちの思想を紹介していくことで米国オルタナティブ労働倫理史を浮き彫りにする意欲的な一冊。最近読んだ本の中でも抜群に面白かった。 1)スラッカー主義の歴史米国の高い勤労意欲を支える労働倫理はマックス・ヴェーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」において「時は金なり」でお馴染みベンジャミン・フランクリンを例に出すことに始まる分析を通じて天職という概念を導き出しているが、ルッツは『天職という概念の新しさは、人間の生涯の仕事を「個人の道徳的活動がとりうる最高次の形態」に変えたところにある』(P44)といい、続けてヴェーバーの説を引きつつ人間が『根本から疎外される運命にある』(P45)という観念もまた導き出されること