味わい深いスクラッチタイルの外壁と正面の窓一面に映し出される動画が、通りかかる人々の足を止める。昼夜を問わず多くの人が流れる天神橋筋商店街、その入口に位置するのが「フジハラビル」だ。絵画や写真の展示から、落語や演劇、映写会まで、幅広く総合芸術ビルとして利用されている。旧帝国ホテルと同じ鉄筋コンクリートスクラッチタイルで大正12年に建てられたこのビルは、レトロモダンな雰囲気を魅力的に醸し出す。オーナーの藤原英祐さんは語る、「このビルは元々父が食品会社の本社ビルとして使用していたもので、その父の亡き後に、このビルを守って欲しいという母の思いに応えて再生しました」。廃墟同然の状態で残っていたものを、10年がかりで自ら修復したのだ。手作りゆえに見られる、ところどころのペンキのむらや床の凹凸も今では独特の味わいとなって温かみをもたらしている。 藤原さんはかつて東京の大学で教鞭を執った法律家。そのため