自らの文学について語る三浦哲郎さん=2000年、東京都内の自宅で 簡潔な文体に清冽(せいれつ)な叙情をたたえた小説「忍ぶ川」や、味わいのある短編で知られる作家の三浦哲郎(みうら・てつお)さんが、29日午前4時33分、うっ血性心不全のため東京都内の病院で亡くなった。79歳だった。通夜は身内で営み、葬儀は9月6日午前11時から岩手県一戸町大沢25の広全寺で。喪主は妻徳子(とくこ)さん。 6人きょうだいの末弟として生まれ、20歳になるまでに2人の姉が自殺、2人の兄が失跡。文学を通して、この滅びの血の問題と向き合う。早稲田大仏文科在学中から井伏鱒二に師事した。 自らの結婚を題材とした「忍ぶ川」で61年に芥川賞を受賞した。東北出身の大学生と料亭で働く女性が愛し合い、不幸な生い立ちを乗りこえて生きる物語は、戦後を代表する純愛小説の一つとされる。 「拳銃と十五の短篇(たんぺん)」(野間文芸賞)、