2010年末から2011年にかけて、ノンフィクション雑誌「G2」に掲載され、大きな反響を呼んだ傑作ルポルタージュ『ネットと愛国』。出版から3年が経ち、世間や当局の目が厳しくなり、過激な言動こそ鳴りを潜めつつあるものの、いまなお一部の言論や文化は着実に市民権を得つつある。そんな「ヘイト」の現在地を安田浩一氏が著す。 正義の悪徳社長 事務所のドアを開けたら、ちょうど業界紙の取材中だった。 「おお、そうだった。約束重なっていたな。すまん、すまん」 軽く頭こそ下げているが、特段にすまなそうな感じはなく、笑顔で私を部屋の中に招きいれた。 「で・・・・・・誰やったっけ?」 そう言いながら人懐っこそうな表情で私の顔を覗き込む。それが、この人の持ち味なのだろう。悪い感じはしない。 坂本篤紀(49歳)――。大阪市住之江区に本社を持つ「日本城タクシー」社長である。あらためて来意を告げると、「ワシ、悪徳社長やか