武士はなぜ生まれたのだろうか? 川尻 秋生/早稲田大学文学学術院准教授 日本の歴史を振り返ってみる時、「武士」の存在はきわめて大きい。しかし、いつ頃、なぜ武士が生まれたのかという点は、実はよく分かっていないのだ。ここでは、その点について、筆者の最近の研究を紹介してみよう。 従来、武士は草深い田舎から発生したと考えられてきた。平安時代の中頃、律令国家の衰退とともに、地方の治安が悪化し、群盗などが発生した。それに対抗するために、荘園領主や有力農民が自衛のため武装し、発展して武士となったという考え方である。 それに対して近年では、武士は都から発生したとする見解が有力になりつつある。もともと律令制下の武官に起源があり、近衛府を経由して、10世紀以降源氏や平氏に武芸が継承された。そして平安京の治安を護り、天皇を守護する人たちを、王権(天皇)が職業として認めたものが武士だという見解である。 筆者も武士
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