生物はなぜ老化し、死ぬように進化したのだろうか? 現在まで、進化学の分野では、老化の進化に関しての理論的研究やその実証研究などが行われてきた。しかし、「老化の進化や死の進化」についての解説には誤解が多い。最近、老化しない生物に関する論文が複数出版されており、「老化しない生物はなぜ進化したのか」という問題と同時に議論する必要がある。本稿では、それらの研究を紹介するとともに、なぜある生物は早く老化し短命であるのに対し、ある生物は老化せずに長寿なのか?という「老化と死」の進化的要因について解説する。 なぜ生物は老化し、死ぬのか 老化(Senescence)あるいは生物学的加齢(biological aging)とは、年齢を経るにつれて死亡率が増大するような生物の生理的状態の変化のことだ。多くの生物は、年を取るにつれて、次第に体の状態が衰え、最終的に死に至る。年齢とともに病気に罹りやすくなったり病
