近時の憲法審査会は、とりあえず多数の賛成を得られそうな争点に絞った上で、いつ審議を打ち切り多数決による見切り発車に切り替えるか、という「日程の政治」へ移行している気配がある。 憲法改正プロセスにおいて、現状では審査会だけが、唯一「数の力」ではなく「理の政治」に徹し得る合議体だ。そこで担保された「理」が、国民が納得ずくで選択するための前提条件になる。この点が不十分なまま、勢いだけで国民投票に持ち込めば、国民にサイコロを振らせるのも同然となり、仮に改憲が成立しても、国民的基盤を得て定着することは難しい。 世界史上成功した憲法会議は、みな「理の政治」に徹し、意見が割れていなかった。立憲主義は、異質な他者との共存の思想だからである。現行憲法の場合も、1946年の帝国議会で高い水準の議論を経た上で、圧倒的多数により可決された。 ナショナリズムの応援のない憲法 日本は、明治維新以来、新政府の政治組織を