本稿は「第二十一回文学フリマ東京」2015/11/23で頒布しました同人誌『多重要塞 vol.4』に収録された文章「日常系とはなにか ~死者の目・生を相対化するまなざし~」を改稿したものです。 はじめに 「日常系」とは、描かれているもの自体ではなく、描かれ方のことだ。 つまり、カメラが映しているモチーフではなく、カメラ自身の振る舞いを指していうものだ。 よって、日常系とは、次のような場所や時間を描写したものである。 等価値であり、それゆえに特定に名指しすることができない、無名の場所や時間 カットされず、長回しであり、止めることも早めることもできない、記録映像や監視カメラのフィルムリールのような場所や時間 凍結されており、見ている側の意図の及ばない場所や時間 カメラの主体さえ、それがあったことを忘れてしまったような場所や時間 これを言い換えれば、日常系とは「死者の目で撮られた、メディアのあら