奇術的なトリックを取り入れた本格推理小説の名手で、直木賞作家の泡坂妻夫(あわさか・つまお、本名・厚川昌男=あつかわ・まさお)さんが3日午後6時36分、死去した。75歳だった。喪主は妻、耀子さん。 東京生まれ。紋章上絵師の家業を継ぐ傍ら、趣味で多くの創作奇術を発表。1976年、名探偵・亜愛一郎(ああいいちろう)の登場する「DL2号機事件」(幻影城新人賞佳作)を発表し作家活動を始めた。奇術がテーマの「11枚のトランプ」や日本推理作家協会賞の「乱れからくり」、夢幻的なサスペンス「湖底のまつり」などで評価を受け、本そのものに仕掛けのある「しあわせの書」「生者と死者」など奇想天外なミステリーを次々と発表した。 90年には職人の世界を描いた「蔭桔梗」で直木賞を受賞。時代小説も多く手がけた。88年「折鶴」で泉鏡花文学賞。 3日昼に体調不良を訴え、病院に運ばれた。 ミステリー作家の有栖川有栖さんの話「紙の
「乱れからくり」「蔭桔梗」などの著作で知られる直木賞作家の泡坂妻夫(あわさか・つまお、本名・厚川昌男=あつかわ・まさお)さんが3日午後6時36分、急性大動脈乖離(かいり)のため、東京都内の病院で死去した。75歳。葬儀の日取りは未定。喪主は妻、燿子(ようこ)さん。 東京生まれ。生家は紋服に家紋を描く紋章上絵師の家。会社勤務を経て、家業を継いだが、そのかたわらに書いた推理小説「DL2号機事件」が昭和51年、推理小説誌で入選したのをきっかけに推理作家としてデビューした。 ペンネームは本名を並べ替えたアナグラム。趣味の奇術を取り入れたトリッキーなミステリー小説などで支持を集めた。職人の誇りや人情の機微を描いた時代小説なども手がけた。53年「乱れからくり」で日本推理作家協会賞、63年「折鶴」で泉鏡花賞、平成2年に「蔭桔梗」で直木賞を受けた。著書に名探偵「亜愛一郎」シリーズや「11枚のとらんぷ」「から
人情味豊かな本格ミステリーで知られる作家、泡坂妻夫(あわさか・つまお、本名・厚川昌男=あつかわ・まさお)さんが3日、死去した。75歳。葬儀の日取りは未定。喪主は妻厚川耀子(あつかわ・ようこ)さん。 都立九段高校を卒業後、紋章上絵師の家業を継ぎながら、奇術を愛好し、プロ級の腕で知られた。75年「DL2号機事件」で第1回幻影城新人賞佳作に入賞してデビュー。この作品で名探偵、亜愛一郎が誕生した。 奇術を小道具にした「11枚のとらんぷ」、小説の構造そのものをトリックにした「生者と死者」など、本格物でミステリーファンの熱心な支持を集めた。他の作品に「乱れからくり」(日本推理作家協会賞)、「折鶴」(泉鏡花文学賞)、「死者の輪舞」「毒薬の輪舞」「迷蝶の島」など。90年には職人の世界を描いた「蔭桔梗」で直木賞を受賞した。
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