■追随許さぬ多層的発想 国内外で高い評価を得てきた日本のアニメーション界の逸材が1人、失われた。ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品された「パプリカ」などを手掛けた、今敏(こん・さとし)さん(享年46)。アニメーション評論家の氷川竜介さん(52)に、その業績を振り返ってもらった。 絢爛(けんらん)たるアニメーション映画で世界中の賞を受賞し、国際的な評価も高い今敏監督が、8月24日、46歳の若さで急逝した。そのあふれる才能は誰もが認めるところで、新作『夢みる機械』を製作中の訃報(ふほう)には大きな衝撃が走った。 その作風は、緻密(ちみつ)にして繊細である。筆致の感じられる絵を使い、計算されつくした視覚情報を慎重につみあげ、構図やカメラワークや色彩など複雑でネットワーク的な相互作用を錯覚に応用。アニメーションでしか成立しないトリックが縦横に、しかもユーモラスに笑いを交えて展開していく