わたしをまっすぐ見てくれなかった母小さいころから、「家族」という言葉にコンプレックスがあった。家族と、特に母と、うまく関係を築くことができなかったからだ。 我が家は4人家族だった。出版社に勤める父と、塾の先生をしていた母、そして2つ下に弟がいる。わたしは長女だから、「優等生に育てなきゃ」という思いが強かったのだろうか(話したり字を読めるようになるのが早かったらしいから、余計に期待が高まったのかもしれない)。幼稚園のころから塾に通わされ、宿題を毎日やらされていた。 塾の勉強がつまらなくて、イヤでイヤで仕方なくて、教室で泣きわめいていたのを覚えている。そんな姉を見ていたからだろう。弟はおとなしく要領よく宿題をこなし、先生にほめられるような子だった。 「弟は素直でいい子なのに」という言葉を、母からなんど聞いただろうか。塾の成績を母に報告するとき、「〇〇ちゃんはどうだったの?」と友人と比較されなか