「リスクをゼロにすることはできないし、無限にコストをかけることもできない。だからリスクをなるべく正確に見つもり、適正なコストで妥当な範囲のリスクにおさえるべし」 科学が何らかの判断をするにあたり、非常に重視するのがこのスタンスである。 たとえば医薬品の臨床試験。普通1年ぐらいに渡って投与を継続し、結果を見る。そうすることで薬効と共に長期的な副作用などを見るわけだが、時にはもっと長期に渡る継続投与ではじめて発覚するような問題が出てくることもある。しかしそういうのは、認可されて大々的に使用されるようになるまで表面化しない。 そうした潜在的リスクが表面化したときの影響は大きいが、だからといって「臨床試験の期間を10年に延長しよう」とはならない。何故なら、そうしてしまうとメーカの負担があまりに大きすぎて新薬の開発が立ち行かず、結果として有効な治療法の確立ができなくなってしまうからだ。リスクを勘案し