“魂の殺人”とも言われる性暴力。身体だけでなく人としての尊厳も傷つけられる深刻な被害にもかかわらず、被害者は誰にも言うことができず、1人で悩み続けます。 今、その知られざる絶望と苦しみを描いた映画が、東京・新宿で公開されています(7月15日まで)。38歳の気鋭の監督が、緻密な取材を基に作り上げたこの映画。初対面の人どうしで感想を語り合う鑑賞会が開かれるなど、静かな反響を呼んでいます。 (科学文化部・信藤敦子記者) 性暴力の苦しみを追体験 映画「月光」。主人公のカオリは、ピアノ教室を営む平穏な日々を送っていました。しかし発表会の夜を境に、人生は一変します。薄暗い駐車場で、教え子の父親から自宅に送ると執ように誘われたカオリ。何度も断るものの、教え子の父親という関係もあり、断り切れずに車の助手席に乗ってしまいます。その結果、人けのない湖畔で性暴力の被害に遭うのです。 映画では、性暴力を受け