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ブックマーク / comemo.nikkei.com (1)

  • 国籍と遺書、兄への手紙|安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

    なぜだろう。30代になってからふと、亡くなった家族のことを思い出すことが増えたように思う。もしかするとそれは、当時の兄の年齢を、私が追い越してしまったからかもしれない。 兄が亡くなったのは、中学卒業を間近に控えた春だった。「前を向いて歩きなよ。過去は変わらないんだから」。当時の友人たちが、私にそんな言葉をかけてくれたのを覚えている。落ち込んでいる私を、何とか励まそうという精いっぱいの言葉だったと思う。その気持ちには今でも大きな感謝を抱いている。 けれども「過去は変わらない」というその言葉が、なぜか心に引っかかり続けた。 私の兄は母親が違い、兄の母親は私が生まれる前に他界していた。13歳年が離れた兄は、なぜかいつも父に対して「です、ます調」の敬語を使っていた。「家族なのになんでいっつも敬語使ってるの?」不思議に思って幾度彼らに尋ねてみた。 父も兄も、ただ笑って私を見つめ、何も答えてはくれなか

    国籍と遺書、兄への手紙|安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
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