結局日没まで歩き続け、観光案内所のおばちゃんに教えてもらった店に入った。 「郷土料理と地酒を置いてる店を教えてくれませんか」 どこのまちに行ったときも、だいたいこうやって訊くようにしている。 これですべてが事足りるし、これ以上望むこともないからだ。 別府と言えば、新鮮な海の幸ととり天である。 郷土の逸品を、大分の酒と共に嗜む。この旅のクライマックスと言ってもいい至福の時間だった。 最高な気分の余韻に浸りながら、軽やかな足取りで宿へ向かった。 旅館すゞめ、いざ中へ 「こんばんは」 「は~い」と言いながら現れた女将さんは、電話の声の印象そのままの優しそうな老媼だった。 名前を告げ、早速部屋に案内してもらった。 通されたのは2階の一番奥、通りに面した部屋だった。 ドキドキしながら部屋に入ると、どことなくアンティークな印象が漂う洋間だった。 一度宿帳を取りに階下に戻った女将さんは足が不自由で、階段