・チェルノブイリの森―事故後20年の自然誌 ウクライナ系アメリカ人ジャーナリストによる長年のチェルノブイリ訪問取材をまとめた渾身のルポタージュ。ロシア、ウクライナ、ベラルーシにまたがる原発事故の地の意外な真の姿がわかる。 視覚的にはチェルノブイリは死の街などではない。 「ところが事故の十年後の1996年に初めてチェルノブイリ地区を訪れると、驚いたことに、いちばん目につく色は緑色だった。このときの取材記録を見ると、「原野」や「森」や「野生生物か!?」などの語句を下線で強調したり、丸で囲んだりした説明がびっしりと書きつらねられている。通説や想像とうらはらに、チェルノブイリの土地は独特の新しい生態系に生まれ変わっていたのだ。悲愴な予言などものともせず、ヨーロッパ最大の自然の聖域として息を吹き返し、野生の生物で満ちていた。動物は、思いもかけず魅力的な棲みかとなった森や草原や沼と同様に、放射性物質で