タイは東南アジア諸国の中でも日本企業がもっとも多く進出し、事業として成功している例が多い国の一つである。タイ政府が自動車メーカーをはじめとした外国資本を政策的に誘致してきたこともあるが、安価で勤勉な労働力が豊富だったことも背景にあるだろう。 4回目となる今回は、タイの消費・流通事情を見ながら、現在タイでビジネスをしている、あるいは今後参入しようとしている日本企業が、何を意識するとよいか、新興国の消費者を今後どのように見るべきか、考えてみたい。 そもそも、タイはまだ「新興国」と呼ぶべき国なのであろうか。本連載の1回目で見たように、購買力平価ベースの1人当たりGDPで見ると、タイはまだ日本の3分の1弱の9700ドル程度である。マクロ指標で見ればタイはまだまだ新興国ということになる。しかし、街角を眺めていると、単に新興国とひとくくりにはできない「消費の現場」に出くわすことがある。 独特の食生活で