この2年間ずっと、忘れられなかった人がいる。 2020年の春、最初の緊急事態宣言が出されたばかりのころ、私は無数の手続きのさなかにいた。その日は朝から区役所に行き、3時間近くかけてマイナンバーカードと健康保険証の再発行を済ませた直後だった。 本当なら今日じゅうに終わらせたい手続きがあと二つあるのに、と焦りながらATMの列に並ぶ。自分の番がきて、久しぶりに使うゆうちょ銀行のキャッシュカードを機械に差し込んだ瞬間、やばい、と思った。暗証番号がまったく思い出せない。普段よく使っているもの、別の銀行のもの、いちかばちかで自分の誕生日、を順番に入れると、エラーが出た。「窓口へお越しください」と音声に告げられ、うう、と暗い気持ちを抱えて郵便局に入る。 写真はイメージです 転入・転出のもっとも多い季節だから、どこに行っても混んでいるのは当然だった。郵便局の硬いソファの背にもたれ、受付番号の書かれた紙を握
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