さっきまでグラスだったものを、彼は見る。代わりを買いに行くのが面倒だと思う。それが自分の手を滑りおちた原因を、彼は把握していない。彼のてのひらの感覚はどこか遠く、それは今にはじまったことではない。のろのろと彼は破片を集める。紙の袋に入れる。あっと声をあげて反射的にガラスの破片の散らばった場所と反対の側にからだを落とす。左足に刺さった破片を、舌打ちして抜いた。いまいましかった。絆創膏なんか持っていなかった。片足で歩いているつもりでよろけて、床に血の跡がついた。もう一度舌打ちをして、怪我の処置のための商品が置いてあるコンビニエンスストアを思いうかべた。それはとても遠いもののように思われた。そこにたどり着くことはとうていできない、無茶な相談みたいな気がした。足にタオルを巻いて彼は、泥のように眠った。 そんなわけで腫れちゃったんだと彼は話す。めんどくさくてさあ。今朝コンビニでマキロンと絆創膏のでか