東北地方に深い爪痕を残した東日本大震災。今週は現在復興中のかの地に心を馳せ、東北が舞台になった物語を紹介します。歴史上の人物から市井の人々まで、力強く生きる姿をぜひ読んでみてください。 はるか昔の平安時代、東北地方に住む人々は蝦夷(えみし)と呼ばれ、大和朝廷に従わず、独自の文化を築いていた。しかもこの地は、黄金が豊富に寝入る土地であったため、朝廷から狙われ、とうとう大軍を送り込まれる。蝦夷の若きリーダー・阿弖流為(アテルイ)は、平和に暮らす民を守ろうと、これを迎え撃つ――。 アテルイは実在の人物で、蝦夷の指導者の1人。現在の岩手県奥州市に侵攻してきた朝廷軍を一度は撃破するものの、その後の戦いで征夷大将軍・坂上田村麻呂に敗れて降伏。処刑された。 この小説でまずおもしろいのは、征服された蝦夷側の視点で書かれていることだ。歴史はつねに勝者の視点で書かれるという。学校で習った日本史では、ただ単