私が以前留学中していたカルフォルニアの大学の脳卒中センターでは,tPAによる治療可能時間を過ぎてしまった脳梗塞患者に対しては,体温と血糖のコントロールを厳密に行なっていた.発熱している場合,解熱剤で下げ(normothermia),血糖はインスリンをsliding scaleにより使用し,厳密にコントロールを行っていた.発熱と高血糖は脳梗塞拡大をもたらすという考えに基づいてこれらの治療が行われている. 高血糖はなぜ脳梗塞の予後を増悪させるか?2つのメカニズムが提唱されている.ひとつは虚血に陥って死にかけている虚血性ペナンブラに存在する神経細胞が,高血糖と血流途絶に伴い生じた乳酸アシドーシスにより完全に死に至る(虚血中心に置き換わる)というもの.もうひとつは,高血糖はtPA後の出血合併のリスクを高めるという考えである.しかし,実際に高血糖をインスリンで是正することで,予後を改善出来るかという