野記読書会のブログ清朝末期に官僚を務めた人物が民国期になって、清朝時代に見聞した事を書いた『清代野記』の現代語訳。 毎週日曜日に4話づつ更新予定。 底本は張祖翼(坐観老人)撰『清代野記』(北京:中華書局,近代史料筆記叢刊,2007年)を使用。中華書局本の底本は1914年野乗捜輯社鉛印本。 城隍昭雪冤獄(城隍神が冤罪を晴らしたこと) 光緒の初年、河南省鎮平県で強盗犯の王澍汶が死刑に臨んで冤罪を主張した事件[1] は、邸抄[2] にはあまり詳しくは記されていない。 その当時、鎮平知県は方なにがし[3] という者であった。若くして進士になり、これが始めての任官であった。その事件はもともと普通の強盗事件に過ぎなかった。裁判の書類が提出されたとき、刑幕(法務関係の役人)が作った文章が乱雑で、供述と合わないところが多くあったため、方がこれを怪しんで問うと、役人は「私たちは法家を熟知している者です。あな