私はまだ泣きたくありません。 尊敬する渡瀬恒彦さんの訃報を聞いたときから、 その現実を受け入れられないのです。 もう一緒にお芝居をさせて頂ける日が来ないなんて 認めたくないのです。 現場では、厳しく甘えを許さない渡瀬さんは、 私にとって、怖い存在でした。 渡瀬さんの前で、緊張のあまり、頭が真っ白になり 台詞を全部、忘れたこともありました。 初めて共演させて頂いたのは、私が20代前半の頃、 「海を渡った愛と殺意」という作品で、 東京と台湾ロケがありました。 海外ロケに不慣れな私とマネージャーを気遣ってくださり 撮影がないときは食事にも困っているだろうと、 何度も食事に連れて行って下さいました。 あるとき、有名な小籠包屋さんで、私が隣のテーブルを何の気なしに「あれ、おいしそう!」と指してしまったら、 「ゆびを指さない‼︎」と怒って下さいました。 ダメなことはダメだと、ちゃんと怒ったくれたのです
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