暖かい日の午後 書店で 買い物ついでに 立ち寄る書店 子供は 入り込まない 文庫本がぎっしりと並ぶ 好きな場所。 そこに あ、 赤いスカートの 少女 まだ 小学生 かな 並んだ背表紙を 目で追っている 本を 選んでいる その身体が 弾んでいる そして 一冊を引き抜き 読みだした と 次の一冊を 手にとった。 ふいに 僕の喉元から 胸にかけて 冷たい水が 流れた 気がした ああ 少女は 本の中にある なにか を つかんだのだ それは 心を厚く 深く する なにか。 小さな友人よ 僕は あなたを 歓迎する あなたは 心の求めるままに 時には 心を悲しみで溢れさせて これからなんども 本を 手に取ることだろう 僕は やさしく 強い 言葉に満ちた あなたのこれからを そして あなたに愛されるであろう 春の甘い風に抱かれた少年を 詩、のような少年を そっと祝おう。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者: