「堪忍袋」という落語がある。明治末年に益田太郎冠者が作った新作である。喧嘩ばかりしている長屋の夫婦が、大家の助言で「堪忍袋」を作り、言いたいことは袋の中へ吹き込むが、中が一杯になって吹き込まれていた悪口が一斉に飛び出してくるというサゲで、「王様の耳はロバの耳」から発想したSF風のものだ。太郎冠者にはほかに「かんしゃく」という中産階級のがみがみ夫に苦しむ妻を描いた落語もあり、大正六年、浅草オペラの東京歌劇座が上演した佐々紅華作のミュージカル「カフェーの夜」の劇中歌「コロッケーの歌」の作詞もある。「コロッケーの歌」は、毎晩女房がコロッケばかり作るので困るという歌で、当時独立してヒットした。太郎冠者は夫婦不仲ものが得意のようだ。財閥の鈍翁益田孝の子である。 この「堪忍袋」を得意としたのが、先代の三遊亭金馬である。あとは八代目柳枝もやった。最近では先代小さんもやったようだが、これは聴いたことがない