青森県沖で10月末、漁船が転覆し船主(60)が命を落とした。船主は救命胴衣を着けていなかった。海上保安庁や漁協は指導を続けているが、救命胴衣着用を頑固に拒む漁師は多い。だが宮城県漁協雄勝町東部支所(石巻市雄勝町)はライフジャケット着用推進員に全国で初めて女性を任命し、1割程度だった着用率を半年で9割まで上げることに成功した。海の男たちはなぜ心変わりしたのか、現場を追った。(荒船清太) 「海で死ねれば本望だ」−。石巻市の漁師、中里孝一さん(52)は数年前、救命胴衣を着けるよう指導に来た漁協職員の説得をそういって拒否したことがある。 「ライフジャケットは有効」「着けていないと遭難したとき死にますよ」。そう言われても「そんなことは分かりきっている」と、心には響かなかった。 実際、子供を船に乗せるときは必ず救命胴衣を着せていた。自分のこととなると拒んでしまうのは「本当の海を分かってない男にいわれて