扁桃体の構成と機能 川村光毅 I) はしがき: 哺乳動物の扁桃体(扁桃核はその組織学的名称)は終脳の半球胞の腹側壁が側脳室の内腔に隆起状に発達した神経節丘の一部から生じる。側頭葉の発達・形成とともに神経節丘の後腹側が前方に移動し、扁桃体は側脳室下角の前端の前上部に位置するようになる。ヒトの扁桃体は側頭葉前部の海馬旁回鈎のすぐ下方にみられる。海馬は終脳の蓋板につづく半球内側面の部分が翼板の肥厚によって形成される“原始”皮質の一部で、発生初期には脳梁の背側に位置している。やがて脳梁に同伴して背後方に発達し、さらに腹前方に進み歯状回となり、また側脳室内に突出して海馬足(固有の海馬、アンモン角)を形成する。扁桃体と海馬は位置的に近接しており、"関係が深い" とよく言われるが、発生の過程からみると互いに独立している(図1)。 大脳皮質との関係でいえば、海馬体とは嗅内野・海馬台(ヒトでいう海馬旁回)