JINSEI STORIES 退屈日記「パパ、ぼくはパパと会うまでずっとお弁当を作ってたんだよ」 Posted on 2022/08/12 辻 仁成 作家 パリ 某月某日、数日前、息子と、ホテルのカフェ・ラウンジでいろいろと話をした時のこと、 「パパ、ぼくね、7月、一人だった時、ずっとお弁当を作っていたんだ」 と言い出した。 「写真、見る?」 携帯を取り出し、作ったお弁当を見せてくれた。 実は、これらの写真、いとこのミナがこっそり、ぼくに、送ってくれていたので、知っていた・・・、えへへ。 「でも、なんで? お皿にいれて食べたらいいのに」 「うん、・・・でも、お弁当箱に入れて食べたかった」 「そうだね、弁当箱だけ洗えば済むからね」 ミナが息子のいない時に言った。 「あの子、ひとちゃんに毎日お弁当を作って貰っていたのが、本当はすっごく嬉しかったんだってよ。忘れられないのよ。だから、一人暮らしを