「イスラム国」による残虐行為は、世界の現実を平和ボケの日本人にあらためて思い知らせた。人類の200万年の歴史の中では彼らが普通で、現代の日本人はきわめて例外的な時代に生きているのだ。40年前に人類学者が発見し、20年前に考古学者が提唱した「人類は石器時代から殺し合いを続けてきた」という仮説が、いま社会科学を大きく変えようとしている。 本書はこの仮説を心理学者が実証データで詳細に実証したものだ。図(クリックで拡大)の最上段が先史時代の戦争による死亡率で、人口の最大60%にのぼる。最下段が現代で、第2次大戦の死者でも世界の人口の2%程度だ。このように時代や文化圏によっても大きく違うが、近代以前の人類は平均して15~20%ぐらいが戦争で殺されていたと推定される。 この比率は成年男子ではもっと高く、半数近くが戦死した社会も珍しくない。つまり数百年前まで、人間の最大の死因は殺人であり、われわれは史上