白川方明(まさあき)総裁にはあぜんとさせられた。10月31日の政策金利の0・2%引き下げ決定後の記者会見で、総裁は「経済情勢、金融情勢自体がこの1カ月弱の間に大きく変化した」と言いのけた。1カ月弱前とは前回の日銀政策決定会合が開かれた10月6、7日を指す。9月15日の米証券大手リーマン・ブラザースの経営破(は)綻(たん)をきっかけに米国発の危機は全世界に飛び火し、ただちに日本にも及んでいた。なのに日銀は情勢を甘く見ていた。それを示すのが「幻の緊急声明」事件である。 10月7日午後6時半、麻生太郎首相は、11日にワシントンで開かれる先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)出席のため出発する中川昭一財務・金融担当相と並んで白川総裁を首相官邸に呼んだ。首相の意図は、「日本のバブル崩壊時の教訓を米側に伝えよ」という指示だとされるが、首相の手元にはある素案があった。 「金融危機に対する日本の決意の