「人類最良の友」といわれるイヌは野生のオオカミを人間が家畜化したものと考えられているが,具体的にどう飼い慣らしたのか,どのくらいの期間がかかったのかなど,その詳細は歴史のなかに失われてしまった。そこでオオカミからイヌへの進化を再現することを目指し,60年がかりの実験がロシアで行われてきた。オオカミの代わりに別のイヌ科動物である野生のキツネを用い,従順な個体を数十世代にわたって選抜育種した。すると,わずか数世代のうちに,ぶち入りの毛皮や巻き上がった尻尾など,家畜化に伴う特徴を持ちペットのように振る舞うキツネが出現したという。その後もますます人なつこいキツネが育っている。 再録:別冊日経サイエンス226「動物のサイエンス 行動,進化,共存への模索」 著者Lyudmila Trut / Lee Alan Dugatkin トルートはロシアのノボシビルスクにある細胞学・遺伝学研究所の教授を務める進