2008年の最も重要なキーワードと言える「クラウド・コンピューティング」。その本質と企業や社会に対する影響を,幅広い視点で描いた大著だ。これまでクラウドについて書かれたどんな本や記事よりも知見に富んでおり,面白く読めた。現在起こっている変革の本質をつかむためには最適の書であり,ITに関わるあらゆる人が読むべきである。 前半はクラウド・コンピューティングの本質について,19世紀終わりから20世紀初頭にかけて,電力供給会社が誕生したことによる社会の変化を例にあげる。それまで各企業は工場に隣接して自前の発電所を築いていたが,電力供給会社のサービスへと急速に切り替えていった。電力会社が発電所を集中化することによって“規模の経済”が働き,より低コストの電力供給が可能になったからだ。 米グーグルや米アマゾンなどの“クラウド”によってコンピューティングの分野に起こっている変化も,電力と同じような転換を生