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「ほんとにやめるのか?」 「ああ、あと何年生きられるかと思うと、これまでやりたくても後回しにしてきたことに手をつける時だと思ってね。」 「生活していけるのか?」 「一人ならなんとかなるさ。年金だって25年は支払っているからね。」 「ところでやりたくても後回しにしてきたことって何なの?」 「うーん、何と具体的に問われると困るけど、何か世の中を変えるようなことかな。どんな小さなことでもいいから、世の中の一部でもいいから、良い方向へ。」 「それは通常の企業の仕事を通じてもできるんじゃないのか?」 「でも、会社だとどうしても利益が最終目的になるだろ?そうじゃなくてみんながハッピーになることに知恵と時間を使うのさ。」 「そんな活動で持続できるものがあるかな〜?」 「例えばだよ、いろんなお店でポイントがつくけど、めんどくさくてためてないという人もあるだろ?すべてのお店のポイントを一括してためるような仕
米作家リディア・デイヴィスの長編。彼女はいぜんに『ほとんど記憶のない女』という短編集をだしていますが、今回は長編。とてもすばらしい小説でした。失恋した女性の心理が、錯綜や混乱も含めてきわめてリアルに描かれていて、読み進めるのが苦しくなってしまうほどだった。誰かを失い、相手の不在に耐えながら、その人はもういないという事実に自分を慣れさせていく「喪の作業」についての物語として読みました。人を失うとはまさにこのような経験なのだと納得する。訳者は岸本佐知子さん。 大切な誰かを失ったとき、われわれは果てのない思考の反復に陥る。愛する者の喪失によって、心は千々に乱れるほかない。相手のことを考え、相手の残した言葉を考え、なぜ彼/彼女は去ってしまったのだろうと理由を推測し、自分の落ち度を検証し、お互いの非を比較し、怒りや屈辱を感じ、不安と孤立感にさいなまれ、相手の美点をあらためておもい起こし、幸福だった瞬
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