記事:春秋社 書籍情報はこちら シモーヌ・ヴェーユとは 今回扱うのは『重力と恩寵』である。重力という物理的な現象と、恩寵というごく精神的な現象を取り合わせるタイトルがまず面白い。 『重力と恩寵』はギュスターヴ・ティボンがヴェーユから託されたノートを、彼女の死後、テーマ別に整理編集して出版した断想集である。ギュスターヴ・ティボンは教壇を追われ、田舎で農場の手伝いをしたいというヴェーユを受け入れた人物である。ティボンによって編集された『重力と恩寵』は純粋なヴェーユの著作と言えない面がある。しかし、『重力と恩寵』は春秋社のみならず、岩波文庫やちくま学芸文庫にも入っている。ヴェーユの代表作と見なされているからであるし、実際に与えた影響も大きいようである。 ティボンの序文を読むと、ヴェーユはかなりとっつきにくい人物であったようである。 本質と外見との配置が彼女の場合は入れ換わっていた。大部分の人びと