魯迅の「阿Q正伝」とはなんだったのか藤井 先ほど綿矢さんは中国に関心を持たれたのは比較的最近だとおっしゃっていましたが、実は十五年近く前に読売新聞の書評で拙訳の魯迅『故郷/阿Q正伝』を取り上げてくださっています。その書評でこの短編集に共通するのは貧しい友や病気の父を助けられなかったという後悔が滲み出ていることだと書かれていましたよね。今回の『パッキパキ北京』にも魯迅が出てきますが、綿矢さんは魯迅のどこに惹かれたのでしょうか? 綿矢 貧困や衰弱していく人間への厳しさ、でしょうか。人を見る目が魯迅はとても厳しいと思います。冷たくはねのけるんじゃなく、どうしようもない世の中の荒波に削られていく人間の零落、没落を正確に描く強靭さがある。それが個人的にはとても刺さりました。「故郷」や「孔乙己」、あるいは「祝福」といった短編を読んでいると、久しぶりに再会した友人が落ちぶれて、救いようもないぐらいに疲れ
![「オンナ寅さん北京をゆく!? 新境地の魅力」綿矢りさ×藤井省三『パッキパキ北京』対談(集英社オンライン) - Yahoo!ニュース](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/a965c9734bb1847dbf45296626371a5657553365/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnewsatcl-pctr.c.yimg.jp%2Ft%2Famd-img%2F20231210-00010006-shueisha-000-1-view.jpg%3Fexp%3D10800)