安倍晋三首相は次期日銀総裁に元財務官の黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を充てる人事案を固めた。安倍首相が大胆な金融緩和を柱とする経済政策「アベノミクス」に共鳴する「同志」起用にこだわった最大の要因は、海外からの批判だった。 ◇霞が関人事の常識覆す 「後任選びや加盟国への根回しはこれから。役所の常識ではあり得ない人事だ」−。ある財務省OBは、ADB総裁の後任が固まらないまま黒田氏の起用に踏み切る官邸主導の人選にとまどいを隠せない。 白川方明日銀総裁は2月5日、任期満了より約3週間早い3月19日に辞任する意向を表明。安倍首相は次期総裁の人選に本格的に着手した。物価目標を訴え、積極的な金融緩和によるデフレ脱却を唱える黒田氏は、首相ブレーンの浜田宏一内閣官房参与が総裁候補に挙げた一人だった。 だが、財務省や首相周辺は、1966年の設立以来ずっと日本が維持してきたADB総裁職を失うことを