「豊かさ」と「活力」のトレードオフ 2006年に入って、日本経済はいよいよ「復活」の気配を強めている。積み上がった政府部門の巨額の負債や社会保障システムに関する不安といった中長期的な課題は依然として重いものの、金融機関の不良債権処理に続いて、企業セクターのリストラの結果、雇用、設備、債務のいわゆる「三つの過剰」も解消されつつある。 とはいえ、それは日本経済が、バブル崩壊以降10年余にわたって続いていた病的な状況をようやく抜け出したということであって、バブル期はもちろん、それ以前の安定成長期のような成長力を取り戻すことを意味しているわけではない。日本経済は、バブル期までのような成長を続けるには、「豊か」になり過ぎている。 一般に、経済が未成熟で人々の所得水準が低い段階では、人々の所得や消費活動に対する欲求は切実で、経済全体として成長ペースを維持しやすい。産業構造の高度化や、経済発展で先行した