今月24日、村上春樹が複数巻にわたる長編としては『1Q84』(新潮社)以来7年ぶりとなる作品『騎士団長殺し』(新潮社)を出版する。大型書店などでは日付が変わると同時に発売を開始するカウントダウンイベントなども行われており、もうすっかり恒例行事となった村上春樹祭りが開かれている模様だ。 例のごとく、発売前に小説のあらすじなどが明かされることは一切なく、内容は秘密のベールに包まれているが、興味があるのは、今回の新作に村上の最近の政治や社会問題に対する関心が反映されているかどうか、だ。 たとえば、昨年の10月に村上は象徴的なスピーチをしている。日本ではあまり話題とならなかったが、昨年10月30日にデンマークで開かれたハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞の授賞式に参加した村上は、アンデルセンの小説『影』を取り上げながら、自らの「影」、すなわちネガティブな側面と対峙し受け入れることの重要性を説い