読み終えたとき、唐突になにかを「失った」と思った。 “静か”な装丁とともに、静寂のなかで進みゆく物語。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ “喜嶋先生の”とタイトルにあったため、主人公は喜嶋先生なのかなと思い、読み始めましたが、主人公は大学生の橋場だったので、少々おどろきました。 喜嶋先生の登場までには、思っていたよりもページ数がかかり、喜嶋先生が登場してからも先生の存在感はとても薄く感じました。 ただ、主人公である橋場が大学に入り、修士・博士課程と進むなかで、喜嶋先生と共通する“なにか”を得て、そして卒業し暮らしの中へと潜っていく過程で、“なにか”を失っていく様子は感じとれました。 喜嶋先生と橋場が共通して見ていた世界、それはタイトルの「喜嶋先生の静かな世界」であり、どこまでも潜っていける深い探究の森です。 けれど、ずっとその森を歩き続けるためには、暮らしと自分を切り離し、雑音がなに