本ブログの人事経済学シリーズでは、人材や組織が経済合理性の原則にしたがって行動することを前提に、優れた人材の獲得と活用を可能にする人事管理と、人材活用の制約条件となりうる組織構造の効果的な設計を通じた組織のパフォーマンスの最大化について理解してきました。今回は、人材と組織をつなぐもっとも重要かつ基本的な単位である「職務(仕事、ジョブ)」について、例によってラジアー & ギブス (2017)を参考に考えてみたいと思います。 職務とは、組織として製品やサービスなどのアウトプットを生み出すのに必要なさまざまなタスクを束ねて、人材がそれを担当できるようにパッケージ化したものです。組織がアウトプットを生み出すために職務が存在し、その職務を遂行するために従業員が雇用されます。日本の社会では就職ではなく就社といった「メンバーシップ型雇用」が支配的だという見方がありますが、世界の多くでは、特定の職務遂行の