一篇の詩のための文字、印刷、製本。本に関わる職人の魔法 作家の山崎ナオコーラが〈本の最後のページには、制作に関わったたくさんの人の名前をもっと入れたい〉というようなことを言っていた、のをとあるトーク・イヴェントで聞いた。本一冊に関わるたくさんの人たち。だが本を読むとき、読み終わってからもなかなかそこまで考えは至らなくて、そしてそれがその、関わったたくさんの人たちの技なのだ。目に見えている文字や本そのものの姿かたちと、本の中にある物語や情景、情報の密接さは、わたしたちを早々にその本の世界に浸らせる。わたしたちは完敗なのである。 この「本をつくる」はそこを大いにわからせてくれる。さらにもう一歩を踏みこんで、この書体は? 文字の置き方や印刷は? この形は? 工程とインタヴューで形になるまでを時系列に進む。それぞれの職人が丹精込めて仕上げていくなかでの、考えや悩みや仕事の進め方が見える。 〈一篇の